[レベル: 上級]
スペインのマーケティング機関 Laika(ライカ)が Google 検索結果ページのアイトラッキング調査を実施しました。
その結果、ユーザーの「アテンション(視線が注目するエリア)」と「クリック」が現代の Google 検索結果でどのように乖離しているかが明らかになりました。
調査概要
クリック率だけに依存するのではなく、 22 人の参加者が「どこを見たか」と「どこをクリックしたか」の両方を研究者は追跡しました。
そして、検索結果の各要素について「Attention-Action Gap(注目と行動のギャップ)」を算出しました。
これは、その要素を見た人の割合と、実際にクリックした人の割合との差を示す指標です。
ギャップが大きいほど、その要素は視線を集めても行動には結び付きにくく、ギャップが小さいほど、注目が高い確率で訪問へと転換されることを意味します。
この調査結果は、「SEO では露出そのものが目的である」という一般的な前提に疑問を投げかけるものとなりました。
画像、商品リスティング、AI Overviews の付随要素など、露出度の高い複数の要素は、ほぼすべての調査参加者の目に留まったにもかかわらず、その注目のほとんどがクリックにはつながらなかったのです。
オーガニック検索結果は依然として最も高い転換力を示す
従来のオーガニック検索結果は、ページ全体で最も小さなギャップを示しました。
オーガニック検索結果を見た参加者の 100% のうち、95.5% が実際にクリックしています。
つまり、オーガニック検索結果で視線を集める要素はそのままクリックに繋がるのです。
調査の著者らは、これは読み込みの深さに起因していると見ています。
オーガニック検索結果に対する平均アテンション時間は、単なるスキャン(拾い読み)ではなく、実際に内容を読んでいることを示す範囲に収まっており、ユーザーがクリック前にスニペットを慎重に読み取っていることが示唆されました。
AI Overview は「転換を促すコア」と「受動的な周辺要素」に分かれる
AI Overviews(AIO)は、全体として一様な成果を示したわけではありませんでした。
メインの回答ブロックは、アテンションを 86.4% の割合でクリックへ転換しており、オーガニック検索結果に迫る水準でした。
また、その注視時間も積極的な読解を示す傾向と一致していました。
一方、その周囲の要素は異なる結果となりました。
AIO 内で引用されたソースリンクは、参加者のおよそ 82% が目にしたものの、クリック率はわずか 13.6% にとどまりました。
さらに、「Explore Further with AI(AI でさらに詳しく調べる)」ボタンの成績はそれ以上に低い数値を示しました。このボタンを見た参加者は 83% に達したにもかかわらず、クリックした人は 1 人もいなかったのです。
調査で最大のギャップを記録しました。
ただし、このデータは Google が「show more(もっと見る)」の遷移先を AI Mode に変更する以前に取得されたものです。したがって、このボタン特有の挙動は現在のユーザー体験を反映していない可能性があると著者たちは指摘しています。
それでも、「検索結果から意図的に AI Mode へ移行するユーザーは少ない」というより大きな傾向については、現在でも当てはまる可能性が高いと推測しています。
画像、商品リスティング、動画、PAS は高い可視性、低い成果
いくつかの要素は、ほぼすべての調査参加者のアテンションを集めながらも、有意なトラフィックを生み出していませんでした。
画像と商品リスティングは、参加者の 100% が閲覧したものの、このサンプルではクリックは 1 件も発生しませんでした。
ただし、画像に関する結果は参加者がわずか 6 人であり、確定的な結論ではなく、あくまで方向性を示すものとして受け止めるべきだと著者は注釈を入れています。
動画と PAS(「People Also Search for」、日本語では「他の人はこちらも検索」。ページ下部付近に表示される関連検索候補)も同様の傾向を示しました。
どちらも参加者の約 90~95% が目にした一方で、そのアテンションがクリックへ転換された割合は 10~20% にすぎませんでした。
これに対し、「Related」の検索チップはやや良好な成果を示し、中程度のパフォーマンスに位置付けられました。
⚠️すずき注:「Related の検索チップ (chips)」が何を指しているかわからない。画像検索結果の検索バーの下に表示される関連検索タグのようなものだと思われるが、これはウェブ検索結果の調査であり、ウェブ検索結果でそういったタグを見たことがない
こうした成果の低い要素に対する平均アテンション時間は短く、多くが 600 ミリ秒未満でした。
この時間帯は実際に読むのではなく、素早く視覚的にスキャンしている状態に相当すると研究者らは解釈しています。
つまり、ユーザーは、これらのブロックをチラッと見るだけで、十分に内容を処理することなく次へ進んでいるということです。
無意識のクリックが分析を複雑にする
すべてのクリックが本当の関心を反映しているわけではありません。
AIO の「show more」ボタンでは、通常とは異なるパターンが確認されました。
このボタンでは、エンゲージメント率よりもクリック率の方が高く、一部の参加者は、そのボタンを注視する前にクリックしていました。
研究者らは、これを習慣やボタンの配置によって引き起こされる「反射的クリック」と解釈しています。
このような無意識で自動的なクリックが存在する場合、CTR だけでは実際のユーザーの意図を過大評価する恐れがあると注意を促しています。
SEO にとっての意味
検索結果のあらゆる機能で露出を追い求めることは、トラフィックを獲得することと同義ではないと、調査の著者らは SEO 担当者に対して結論を示しています。
オーガニック検索順位は、依然として注目を訪問へ最も確実に転換する手段です。
AIO のメイン回答ブロック内で引用されることは、周辺の AIO リンクとして掲載されるよりもはるかに価値が高いと考えられます。
一方で、画像、商品リスティング、動画、PAS といった機能は、ブランド認知の向上という観点では依然として価値がある可能性があるものの、意味のあるクリック流入を期待すべきではないとしています。
留意すべき点
この調査は、スペインで実施された PC 検索版 Google を用い、スペイン語で 9 件の検索を行った 22 人の参加者を対象としています。
また、画像の 6 人 や PAS の 10 人 など、一部のサブカテゴリは特にサンプル数が少ないという点にも注意が必要です。
また、著者らは、この研究は実験ではなく観察研究であると説明しています。
そのため、得られた結果は「アテンション」と「クリック」の関連性を示すものであり、一方が他方の原因であることを証明するものではありません。
したがって、この調査結果は有用な方向性を示すシグナルではあるものの、普遍的に一般化できる決定的なベンチマークと捉えるべきではないとしています。
調査方法 概要
- 主指標:Attention-Action Gap(注目と行動のギャップ)を採用。この指標は エンゲージメント率(閲覧者の割合)− CTR(クリック率) によって算出される。ギャップが大きいほど、その要素は多くのユーザーに閲覧されてもクリックされにくく、ギャップが小さいほど、ユーザーの注目が効率よくクリックへと結び付いていることを意味する。
- 使用した機器:テストには、デスクトップ設置型の Tobii Pro アイトラッカー を使用し、ユーザーの視線の動き、注視位置、注視時間を記録した。
- データ規模:データセットは、22 人 の参加者が 9 件 の検索を 4 種類 の検索意図にわたって実施した際に収集された 1,556 件 のデータポイントで構成されている。
- 実施環境:観察研究は、2025 年 12 月から 2026 年 2 月 にかけてスペインで実施された。検索にはデスクトップ版の Google.com を使用し、すべてスペイン語で検索が行われた。
- 情報処理の深さ:研究者らは、平均アテンション時間を情報処理の深さを示す指標として分析した。その解釈では、約 600 ミリ秒未満 の注視は、内容を注意深く読むのではなく、素早く視覚的にスキャンしている状態を示すとしている。
◇ ◇ ◇
信頼性が必ずしも高いとは言えないとしても、検索結果での「視認性」と「実際のクリック」の間に大きな乖離がある可能性を示した非常に興味深い調査です。
オーガニック検索と AI Overviews のメイン回答は高い CTR を維持している一方、画像や商品リスト、AIO 内のリンクはクリック率がほぼ 0% という「アテンションの空白地帯」になっています。
結局のところ、トラフィック獲得において本当に機能しているのは従来のオーガニック検索と AI Overviews のメインテキストブロックのみであり、SEO において単に「目立つこと」だけを目指すのはさほど価値がないのかもしれません。
