「GEOは無駄」なのか? AI トラフィックをめぐる 3 つの調査とその反論

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AI 検索への最適化、いわゆる GEO にどこまで力を入れるべきでしょうか?
この問いについて、同じ週に次の 3 つの調査が公開されました。

3 つとも GA4 のデータを分析しています。
そして、AI からのトラフィックは小さいという結果を示しました。

Rand Fishkin 氏が LinkedIn でこれらをまとめて紹介したこともあり、「GEO は無駄だ。クリックを生む施策に戻れ」という結論が広まりました。

これに異を唱えたのが iPullRank の Mike King 氏です。

数字は正しい。しかし、ブランドのためのチャネルをトラフィックの物差しで測っているのが間違いだ。

こう主張しています。

この記事では、4 本の記事の要点を整理します。

The SEO Works: AI からの流入はオーガニック検索の 39 分の 1

The SEO Works は 95 サイトの GA4 データを分析しました。
期間は 2025 年 9 月から 2026 年 8 月までの 12 か月です。

流入量はオーガニック検索が圧倒的

流入量については次のような結果でした。

  • オーガニック検索のセッションは約 283 万
  • AI アシスタントからの流入は約 7.2 万
    • オーガニック検索は AI の 39 倍
    • 逆に言えば、AI はオーガニック検索の 2.6%

ただし、2026 年 5 月以降は AI からの流入が増えています。

  • オーガニック比で 2.29% から 3.04% に上昇
  • 5 月 7 日ごろ、ChatGPT が回答内のブランド名をリンクにし始めた時期と重なる
    ※ただし、この変更が原因かどうかは「仮説」にとどめている

コンバージョン率は約 1.2 倍。ただし例外も多い

コンバージョン率は AI のほうが高い結果でした。
ただし差は大きくありません。

  • AI からの流入は 7.18%
  • オーガニック検索は 6.08%
    • AI のほうが約 1.18 倍高い

ただしこれは、ほかの調査で出回っている 3 倍、4.4 倍、23 倍という数字よりかなり低い値です。
また、例外も目立ちます。

  • 63 サイト中 23 サイトでは、AI のほうがコンバージョン率が低い
  • B2B の製品を扱うサイトでは 0.62 倍と、明確に低い

比較対象によっても倍率は大きく変わります。

  • 有料検索と比べると 0.67 倍
  • オーガニック検索と比べると 1.18 倍
  • ダイレクトと比べると 2.48 倍

何と比べたかを示さない倍率は検証できない、と The SEO Works は指摘しています。

件数で見るとオーガニック検索の改善が効く

コンバージョンの件数では差がさらに開きます。
オーガニック検索が 100 件のコンバージョンを生むとき、AI は 3.2 件です。

1 サイトあたり月にどれだけコンバージョンが増えるかの試算は次の通りです。

  • オーガニック検索を 5% 伸ばす: 10.3 件増
  • AI からの流入を 2 倍にする: 6.6 件増

AI とオーガニック検索は一緒に伸びる

AI からの流入が伸びたサイトは、オーガニック検索も伸びていました。
サイト全体の成長の影響を除いても、この関係ははっきり残りました。
同じ土台、つまり事業の明確さや一貫した情報、信頼性が両方を押し上げていると考えられます。

一方、「ビルボード仮説」は支持されませんでした。
ビルボード仮説とは、AI でブランドを見た人が、あとで URL を入力して直接訪問するという考え方です。
AI の回答への露出が屋外の看板広告(ビルボード)のように働くと例えています。
サイト全体の成長の影響を除くと、AI 流入の伸びとダイレクトの伸びの関係は消えました。

なお、Google の AI Overviews からのクリックは通常のオーガニック検索として計上されます。
そのため分析に含まれていません。
AI の貢献は「下限」として読むべきだとしています。

Marie Haynes 氏: GEO は「気を散らすもの」

Marie Haynes 氏は、100 サイト分、12 か月の GA4 データを調べました。
総セッションは 1 億 4,500 万を超えます。

ChatGPT からの流入は Google の 0.62%

Google のオーガニック検索と比べた AI からの流入は次の通りです。

  • ChatGPT からのセッション: 0.62%
  • ほかの LLM をすべて足した場合: 0.73%

コンバージョン率は高いが、件数は Google が圧倒

コンバージョンを計測していたのは 55 サイトです。

  • Google のオーガニック検索のコンバージョン率は 3.02%
  • ChatGPT からの流入は 13.8%
    • 4.5 倍以上高い
  • それでも、全コンバージョンの 96.5% は Google が生んでいた
    • Google のオーガニック検索は、LLM の合計の 27 倍のコンバージョンを生んでいる

ChatGPT からの流入はすでに頭打ち、実際に人を送っている AI 検索は Google

ChatGPT からの流入は、2025 年 8 月の GPT-5 公開のころに急成長が止まりました。
それ以降は、むしろ減る傾向にあります。

実際に人を送っている AI 検索は ChatGPT ではなく Google だと Haynes 氏は言います。
多くの人が、次の機能を通じて Google の中で AI 検索を使っているからです。

  • AI Overviews
  • AI Mode
  • AI を中心としたランキングシステム

そのうえで、次を勧めています。

  • コンバージョンを計測し、改善する
    • 実は 100 サイト中 45 サイトがキーイベントを計測していなかった
    • 機械向けの最適化よりも、ユーザーの満足度を高めることを重視する
  • エージェント型のウェブに備える
    • Google の Universal Cart
    • Universal Commerce Protocol(UCP)
    • WebMCP
    • スマートグラス

Kevin Indig 氏:「隠れた AI トラフィック」は見つからなかった

業界には「AI からの流入の多くがダイレクトとして計上されている」という見方があります。
Kevin Indig 氏はこれを確かめようとしました。

きっかけは Ramp の事例です。
Ramp はダイレクト流入の 30〜40% をアンサーエンジン由来と特定しました。
そして、ユーザーの自己申告で実際に AI 経由だと確認しています。

ダイレクトの増加はボットだった

Indig 氏は 12 サイトの GA4 データを、2026 年 8 月と 9 月で比べました。
トップページや料金ページなど、もともとダイレクトが多いページは除外しています。
結果は次の通りです。

  • 12 サイト中 8 サイトでダイレクトが増加
    • しかし、その多くはボット
    • あるサイトでは 40 万 9,000 のダイレクトセッションのうち、エンゲージしたのは 198 だけ
  • 1 月から 9 月の推移
    • ダイレクト全体は 140.9% 増
    • エンゲージしたダイレクトは 1.0% 減
  • AI の痕跡を確認できるダイレクトは、全体の 0.003% にすぎない

一見強い相関も、検証すると崩れた

次に、4 ブランドで AI での露出とダイレクトや指名検索の関係を調べました。0〜6 週の時間差を付け、合計 632 のテストを実施しています。

最初は有望に見えました。

  • サイト 1: AI でのシェア・オブ・ボイス (SOV) とダイレクトの相関が 0.72
    • 3 週間後にピーク
    • 指名検索との相関も 0.59
  • サイト 2: ChatGPT での言及率とダイレクトの相関が 0.47

しかし、Indig 氏はここで止まりませんでした。
週をわざとずらしたデータでも同じ検証をしています。

  • 週をずらしても、同じかそれ以上の相関が出た
    • サイト 1 では 19 通り中 3 通り
    • サイト 2 では 38 通り中 2 通り
  • 期間を前半と後半に分けると、相関が出る時期が一貫しない
  • 使える週次データが 17 週分と 35 週分しかない

結論として、AI での露出と、その後の指名検索やダイレクトの間に、信頼できる関係は確認できませんでした。
ただし、効果がないと言っているわけではありません。
「切り分けられなかった」という結論です。

推奨する計測方法

ダイレクトの数字に頼らない計測を Indig 氏は勧めています。
次の 3 つを組み合わせる方法です。

  1. AI のどこにブランドが出ているかを、決まったプロンプトの組み合わせで追う
  2. 新しい見込み客や顧客に「どこで知ったか」を聞く
  3. その回答を商談や売上につなげて追う

Mike King 氏: AI 検索は「ブランディングのチャネル」だ

数字は正しい。物差しが違う

King 氏は 3 つの調査の数字を否定していません。
方法は妥当で、AI 検索を成果獲得のチャネルとして測ればそうなる、と認めています。

問題は結論の出し方です。

3 つとも、ブランドのためのチャネルをトラフィックの物差しで評価している。これはスーパーボウルの CM をクリック率で評価し、テレビは無駄だと言うようなものだ。

このように King 氏は述べます。

AI の利用規模として次の数字を King 氏は挙げています。

  • ChatGPT: 週 12 億人
  • AI Mode: 月 10 億人超
  • AI Overviews: 25 億人

同意している点

もっとも King 氏は、多くの点で 3 つの調査に同意しています。

  • スキーマの小技や llms.txt のような「戦術としての GEO」は無駄
  • Google が最も多くの訪問者を送っている
  • ブランド効果は、分析データで大規模に実証されていない

人は「検索」ではなく「会話」をしている

AI 検索と呼びますが、検索しているのは機械です。人は会話をしています。会話では回答そのものがゴールなので、どこかへ移動しようとは思いません。

King 氏は、クリックが減っていることを示す次のようなデータを挙げています。

  • Semrush: クリックせずに終わるセッションは、AI Overviews がない場合で約 34%、ある場合で約 43%
    • AI Mode では約 93%
  • Pew Research: AI Overviews があると通常の検索結果のクリックは 15% から 8% に減少
    • 要約内のリンクがクリックされたのは 1% だけ

ChatGPT の利用者は、同じ時期に 7 億人から 12 億人に増えました。
それでも ChatGPT からの流入が減ったのは、回答の質が上がり、確認のための訪問が不要になったからだ、と King 氏は解釈しています。

計測できなくても、購買判断は左右されている

消費者調査では、AI が購買に影響していることが示されています。

  • 62% が、AI チャットボットの影響で普段と違う製品やブランドを買った(Attentive)
  • チャットボットで買い物をする人の約 81% が、AI の情報で購入をやめたことがある(Semrush)

Kevin Indig 氏の結果への反論

King 氏は、Indig 氏の結果が反対側の最も強い論拠だと認めています。
そのうえで、調査の設計に次の問題があると指摘しています。

  • ダイレクトの比較は 8 月と 9 月の 1 か月比較だった
  • 人がブランドを聞いて入力するトップページを除外していた
  • サンプルが、検討期間の長い B2B に偏っていた
  • 4 ブランドしか見ていない

さらに、個別に見ればブランド効果は出ていると言います。
0.72 や 0.47 の相関がその例です。
Binet と Field の研究によれば、ブランド構築の効果が短期の効果を上回るまで約 6 か月かかります。
1 か月の期間では見えないのは当然だ、という主張です。

ブランドチャネルはもともと計測できない

看板もテレビ CM もスポンサーも、クリックで評価されたことはありません。
それでも予算は流れ続けています。
最も近いのは PR だと King 氏は言います。
AI の回答は、機械が作る「アーンドメディア」だという考え方です。

今の計測は AI の影響を過小評価している

GA4 の「AI 流入」は下限にすぎないと King 氏は指摘します。
理由は 3 つです。

  1. リファラーが落ちてダイレクトになる流入がある
    • Indig 氏自身、AI 流入の約 70% がダイレクトに計上されると推計
  2. AI Overviews や AI Mode からのクリックが、比較対象の Google オーガニックに含まれている
  3. 多くの露出には、そもそもクリックするリンクがない
    • BrightEdge によると、ChatGPT はブランドを引用より 3.2 倍多く言及している

CMO がやるべきこと

King 氏の提案は「成果獲得ではなくブランドとして予算を組め」です。
そのうえで次を勧めています。

  • AI 可視性ツールで、次の指標を測る
    • プロンプト単位のシェア・オブ・ボイス
    • 言及頻度
    • 引用位置
    • 評判
  • 指名検索、ダイレクト、自己申告の経路を四半期単位で見る
  • 可能なら、地域や製品ラインでホールドアウトテストをする
  • AI でのシェア・オブ・ボイスをマーケティング・ミックス・モデリングに入れる
  • ウェブ全体でブランドの情報を増やし、一貫させる

AI エージェントも同じ情報の層を参照します。今、AI の回答に出ないブランドは、将来エージェントの候補にも入れない、とも King 氏は提案しています。

まとめ: 対立しているのは事実ではなく、評価の軸

4 本を並べると、事実についてはほぼ一致しています。
双方が認めているのは次の 3 点です。

  • AI からの流入は小さい
  • Google が今も最大の流入源である
  • 小手先の GEO は無駄である

違うのは評価の軸です。

  • 3 つの調査: 「AI 検索は成果を生むチャネルか」を問い、答えは「ノー」
  • King 氏: 「AI 検索はブランドを形づくるチャネルか」を問うべきだと主張

問いが違うので、答えも違って見えるのです。

すべてを考慮すると、次のように取り組むのが妥当でしょうか?

  • SEO の土台を最優先にする: The SEO Works のデータが示すように、それは AI での成果にもつながります。Google の AI Overviews や AI Mode も、その延長線上にあります。
  • 低コストで始められる計測を加える:次の 2 つは、最低限実行したいことです。
    • 主要なプロンプトで、自社がどう言及されているかを定期的に確認する
    • 問い合わせフォームに「どこで知りましたか」を加える

クリックの数字だけで AI を切り捨てるのは早計です。
一方で、証明されていないブランド効果を前提に、大きな予算を投じるのも慎重であるべきです。
「計測を整えながら、自社のデータで判断していく」、これが現時点で最も現実的な姿勢だと考えます。

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