Google 検索はAI Modeを超えてどこへ向かうのか 〜 検索部門トップの発言から見る、検索体験のこれから

[レベル: 上級]

Google 検索の未来をテーマに、Tech360 が、検索部門トップの Liz Reid(リズ・リード)氏に Google I/O で独占インタビューしました。

Google 検索は今、大きな転換点を迎えています。
従来のキーワード検索と AI による回答生成を別々の体験として扱うのではなく、両者を 1 つの自然な検索体験として統合しようとしているのです。

Reid 氏の発言からは、検索が単なる「情報を探す道具」から、ユーザーの意図を理解し、必要な情報を整理し、時には先回りして支援する存在へと進化していることが見えてきます。

この記事では、インタビューの主要ポイントをまとめます。

「検索」と「AI Mode」の境界がなくなる

これまでの検索では、ユーザーはウェブリンクの一覧を見るのか、AI に要約してもらうのかを、ある程度意識して選ぶ必要がありました。
しかし Google は、その区別をなくし、検索ボックス 1 つであらゆる入力や回答形式に対応できる体験を目指しています。

テキストで質問するだけでなく、音声、画像、Google レンズ、PDF などの文書も検索の入り口になります。
検索ボックスは単なる入力欄ではなく、ユーザーの目的に応じて広がる AI インターフェイスになっていくのです。

Reid 氏は、次のように語っています。

検索では、AI の最良の部分とウェブの最良の部分を組み合わせることができます……そのため、『まず役立つ AI の回答が欲しいのか、それともウェブをクリックして他の人の意見を聞きたいのか、どちらかを選ばなければならない』と感じる必要はなく、実際にそれらを刺激的な形で融合できます。

さらに、AI Mode と従来型検索を分けて考える必要もなくなると述べています。

『従来型の検索が欲しいのか、それとも AI Mode が欲しいのか』と実際に考える必要はありません。ただ検索ボックスに行けば、AI 検索ボックスに期待するすべての力を得られます。つまり、検索ボックスは拡張され、必要であればマルチモーダルに対応し、レンズを使いたい場合や PDF を使いたい場合も、すべてできるようになります。

つまり、今後の Google 検索は「リンクを探す場所」ではなく、「知りたいことをあらゆる形で投げかけられる場所」へと変わっていくと言えます。

検索は、情報を待ってくれる「エージェント」になる

検索の役割は、ユーザーが入力した質問にその場で答えるだけではなくなりつつあります。
今後は、情報が更新されるまで待ち、条件に合う変化が起きたときに知らせてくれる、能動的なアシスタントとしての役割も担うようになります。

たとえば、新しいイベント情報、劇場の公演、美術館の展示、地域のニュースなど、いつ更新されるかわからない情報を追い続けるには、これまで何度も検索し直す必要がありました。
こうした繰り返し作業を「情報エージェント」に任せられるようにすることを Google は目指しています。

Reid 氏はこの点について、次のように説明しています。

情報がいつ準備できるのかわからないことがあります。だから、何度も何度も確認し続けなければなりません。それはとても大変なので、多くの場合、人々はそもそもやろうともしません……でも、『町で何か新しいことがあったら、劇場で新しい公演があったら、美術館で新しい展示があったら、知らせ続けてもらえますか』と言うだけで、それが来たときに通知してくれます。

これは、検索が「今ある情報を探す」だけでなく、「これから出てくる情報を見張る」存在になることを意味しています。

検索結果がその場でカスタムアプリになる

Google 検索は、ユーザーの質問に応じてリアルタイムでコードを書き、実行し、個別のダッシュボードや可視化ツールを作る方向にも進んでいます。

たとえば、複雑なプロジェクトの進行状況を整理したい場合、株式指標を比較したい場合、旅行や予定を視覚的に整理したい場合など、単なる文章回答では不十分なケースがあります。
こうしたとき、AI がその場で必要なコードを書き、ユーザー専用のミニアプリのような画面を作ることができるようになります。

Reid 氏は、次のように述べています。

それは、あなたにとって非常に個人的な可視化であることもあります……また、ときには、あなた専用に追跡したいプロジェクトやダッシュボードのようなものにまで及ぶこともあり、私たちはそれを小さなミニアプリのように実現できます。そして、実際にそれを作成できます……私たちはエージェント的な機能を使って、検索の中で必要に応じて、あなた専用の体験を本当にコード化します。

検索結果は、単なるリストや要約ではなく、ユーザーの目的に合わせて動く「一回限りのツール」へと進化していく可能性があります。

専門用語を、ユーザーの理解度に合わせて翻訳する

医療や金融のような分野では、情報そのものよりも、専門用語の難しさが理解の壁になることがあります。
こうした複雑な情報をユーザーの読解レベルや理解度に合わせて言い換える役割も Google の AI は担います。

重要なのは、単に内容を簡単にするだけではなく、事実としての意味を保ったまま、理解しやすい表現に変換することです。
これは、専門知識がない人にとって大きな助けになります。

Reid 氏は次のように述べています。

医療や金融に関することを理解したいのに、その専門用語が実際にはわからない場合……質問するだけで、AI がその情報を受け取り、あなたの読解レベルや理解度に合った形へと変換する手助けをしてくれます。

検索は今後、情報を見つけるだけでなく、「理解できる形に整える」役割をより強めていくでしょう。

AI によって、グローバル展開のスピードが変わる

Google の AI 機能は、多言語対応を前提とした大規模言語モデルによって、以前よりはるかに速く世界中へ展開できるようになっています。

かつては、新しい機能を各国や各言語に対応させるために、数か月から数年かかることもありました。
しかし現在は、基盤モデルの力によって、多くの国と言語に短期間で展開できるようになっています。

Reid 氏は、次のように振り返っています。

私たちにとって以前は、何かを作っても、それをすべての異なる国やすべての異なる言語に届けるまでに、数か月、あるいは数年かかるように感じられることがあり、それが不満の種でした。そして AI Mode では、数か月のうちに、多くの国、多くの言語で利用可能になったのを目にしました。

一方で、単に翻訳すればいいということでもありません。
地域によって役立つ情報は異なります。
たとえば、バンガロール、デリー、ロサンゼルスでは、同じ質問でも参照すべき情報や優先順位が変わります。

Reid 氏は、検索で長年培ってきたランキング技術が、AI 回答の土台にもなると説明しています。

また、私たちは……長年にわたって検索で行ってきたウェブランキングを理解する取り組みの上に構築し、バンガロールにいるのか、デリーにいるのか、ロサンゼルスにいるのかに応じて、どのウェブコンテンツが他のウェブコンテンツよりも回答をグラウンディングするうえで有用なのかを理解することができます。

AI 時代の検索では、グローバルに展開できるスピードと、ローカルに最適化する精度の両方が重要になります。

テクノロジー分野で女性を後押しするメッセージ

検索と直接の関係はありませんが、最後に Reid 氏は、テクノロジー分野で働く女性に向けてもメッセージを発信しています。
特に強調しているのは、探索し続けること、試し続けること、そして学びを共有することです。

生成 AI の進化は非常に速く、今日うまくいかなかったことが、来月にはできるようになっているかもしれません。
だからこそ、一度試して失敗したからといって諦めるのではなく、時間をおいて再び挑戦することが大切だと Reid 氏は語ります。

探求し、学ぶあらゆる機会を活用してください。何が可能かは本当に速いペースで変化しており、多くの機会があります……何かを試してうまくいかなかったとしても、来月また試し、2 か月後にまた試し、学んだことを共有してください。他の人を刺激する手助けをしてください。私が 1 人を刺激できれば、その人はきっと次の 5 人を刺激できるはずです。

Reid 氏の言葉は、女性だけに限らず AI 時代のキャリア形成において重要な姿勢を示しています。
新しい技術を完璧に理解してから使うのではなく、触りながら学び、試しながら可能性を広げていく。その積み重ねが、個人の成長だけでなく、周囲の人々への刺激にもつながっていきます。

◇ ◇ ◇

Liz Reid 氏の発言から見えてくるのは、Google 検索が単なる検索エンジンから、より能動的で個人化された AI アシスタントへと進化している姿です。

これからの検索は、キーワードに対してリンクを返すだけではありません。
ユーザーの意図を理解し、AI とウェブを組み合わせ、情報をわかりやすく整理し、必要に応じて専用のツールを作り、さらには新しい情報が出たタイミングで知らせてくれる存在になっていきます。

検索体験の中心は、「どの情報にたどり着くか」から「その情報をどう理解し、どう活用するか」へと移りつつあります。
Google 検索の進化は、AI 時代における情報との向き合い方そのものを変えていくことになりそうです。