[レベル: 上級]
AI 検索機能はユーザーの満足度が高く、毎週数十億のクリックをウェブサイトに送っている。
このように Google は主張しています。
しかし、Saharsh Agarwal(サハルシュ・アガルワル)氏と Ananya Sen(アナンヤ・セン)氏による調査では、AI Overviews(以下、AIO)が出ると外部クリックは約 4 割減り、ユーザーの満足度に変化はないことが判明しました。
調査方法 概要
調査方法の概要と、補足事項です。
- 対象:米国の PC 版 Chrome 利用者 1,065 人
- 期間:2 週間
- 参加者:Prolific という調査サービスで募集した人たち
- 満足度:自己申告の数字
実験では参加者に、2 週間ふだんどおり検索してもらいました。
参加者は、3 つのグループに無作為に分けています。
- 通常の Google 検索 (396 人)
- 拡張機能で AIO を非表示にした検索 (374 人)
- 会話型の AI Mode (295 人)
ここで、2 つ目の「AIO 非表示」グループの参加者の大半は、AIO が消されている、または自分の検索画面が通常と違うことに「気づかなかった」か「わからない」と答えました。
また、広告クリックは差がありませんでしたが、そもそも広告が少ない検索が中心で、小さな差は見つけにくい状況でした。
AIO が出ると外部クリックは約 4 割減る
AIO が出る検索では、広告を除く外部サイトへのクリックが 1 検索あたり 0.62 回から 0.37 回に減りました。
減少率は 39.8% です。
100 回検索すると、約 25 クリックが失われる計算です。
外部サイトを 1 回もクリックしない検索、つまりゼロクリック検索は、54% から 73% に増えました。
検索全体で見ると約 18.5% 減
AIO が出るのは、検索全体の約 41% です。
そのため、すべての検索で見ると外部クリックの減少は約 18.5% になります。
ただし、「40% 減」はあくまで AIO が出る検索での数字なので、サイト全体の流入減と混同しないよう注意が必要です。
AIO 内のリンクからのクリックは 7.1% だけ
AIO の中には出典リンクが載りますが、そこからのクリックはわずかでした。
AI Overviews が出た検索の外部クリック 5,249 件のうち、AIO 内のリンクからは 372 件 (7.1%) です。
残りの 92.9% は、AIO の下にある通常の検索結果からでした。
AIO に引用されることで得られる流入は、この調査期間では小さかったと著者らは述べています。
影響は「最上部に出る場合」に集中
AIO が出る検索の 87% 超で、AIO は検索結果の一番上に表示されました。
| AIO の位置 | AIO なし | AIO あり |
|---|---|---|
| いちばん上 | 0.60 回 | 0.32 回 |
| それより下 | 0.77 回 | 0.75 回 |
いちばん上に出る場合のみ、はっきり差が出ています。
ただし、AIO の位置は無作為に決めたものではありません。
クエリの種類の違いも混ざっている点には注意が必要です。
また、AIO が一番上にあるとき、非表示にして最も増えたのは検索結果の 1 位でした (0.12 回から 0.23 回)。
2 位、3 位が続きます。つまり、上位表示のページほど AIO の影響を強く受けています。
クエリの種類別では、情報を調べるインフォーメーショナル検索で差が大きく出ました (0.36 回から 0.62 回)。
特定のサイトを探すナビゲーショナルと購入や予約などのトランザクショナルでは、はっきりした差は出ていません。
ただし、この 2 種類はサンプルが少なく、精度は高くありません。
利用者の満足度は変わらない
終了時のアンケート (5 段階評価) では、AIO の有無で満足度の差はありませんでした。
| 項目 | AIO あり | AIO なし |
|---|---|---|
| 検索への満足度 | 4.0 | 4.0 |
| 情報の質 | 4.0 | 4.0 |
| 情報の見つけやすさ | 4.1 | 4.1 |
サイトを訪れた後の行動にも、明確な差はありませんでした。
戻るボタンで検索に戻った割合と、10 秒未満で離脱した割合は、AIO 非表示のグループのほうがそれぞれ 1.1 ポイント、1.0 ポイント低かったものの、統計的に確かな差とはいえません。
滞在時間も同じ程度でした。
Google が主張する「AIO が質の高い訪問を増やしている」という証拠は、この実験では見つかりませんでした。
クリック後の離脱率や滞在時間は、AIO の有無でほぼ同じです。
AI Mode は参考程度
AI Mode では、1 検索あたりの外部クリックが 0.36 回、ゼロクリック検索が 70%、満足度が 2.9 点と、さらに低い結果でした。
ただし、AI Mode のグループは 295 人中 118 人(約 40%)が途中でやめています。
通常の検索のグループは約 8% なので、大きな差です。
残った人だけの数字になるため、AI Mode の影響とは断定できません。
◇ ◇ ◇
研究では、情報を調べる検索を中心に、サイトへのクリックを AIO は大きく減らしていました。
一方で、利用者の満足度や使いやすさが上がった形跡は、この実験では見つかっていません。
そもそも、Google はユーザーの満足度をどのように判断しているかについて触れていません。
ただ「満足度が高い」と抽象的な表現にとどめています。
イベントなどで、どんなデータをもとにそう言えるのかを質問してもはぐらかされます。
なんにせよ、AI Overviews に引用されても流入はあまり増えないため、AIO に載ることだけを目標にするのは危険かもしれません。
AIO が出にくい検索や、AIO があっても訪問したくなる内容づくりも、あわせて考える必要があります。
