リンクを買ったJCPennyはこのようにしてGoogleにペナルティを受けた

米国の大手デパートメントストアチェーンのJCPennyがランキングを上げるために有料リンクを購入し、ガイドラインに違反したとしてGoogleにペナルティを与えられたことを昨日のエントリでレポートしました。

どんな有料リンクだったのか、Googleがどのように対処したのか、もう少し詳しく説明します。

JCPennyが買ったリンク

JCPennyがSEOを依頼していたのは、SearchDexという業者です。
JCPennyが言うには、ペナルティの原因となったリンク購入はすべてSearchDexが承諾なしに行っていました。

JCPennyが取り扱っている商品とはまったく関係のないページからキーワードだけをアンカーテキストにしたリンクを張っていたようです。

たとえば、“black dresses”(黒いドレス)というキーワードではこのページからリンクを張っていました。
「核工学」のサイトのようです。

“Evening dresses”はこのページからです。
カジノのサイトっぽいですね。

“Cocktail dresses”はこのページからです。
別荘を販売する不動産会社のページですかね。

なかには、放置されたサイトでコンテンツが何もなくて、アンカーテキストにしたキーワードだけがぽつんと置かれた状態のリンク元ページもあったようです。

問題となるリンクをJCPennyはすでに削除したらしく(そりゃそうですよね)、実際の状態がどうだったかを見ることを見ることはもうできません。

ただYahoo! Site ExplorerOpen Site Explorerを使えば、怪しいサイトからリンクを張っていたことは今でも知ることができます。

Open Site Explorerで調べたJCPennyのバックリンク

音楽TIPSのページから“Discount Furniture”(格安家具)のアンカーテキストで、自動車手入れのページから“Pillowcasaes”(枕カバー)のアンカーテキストでリンクが張られていますね。

多少なりともSEOを知った人間であれば、「作ったリンクだ」というのがすぐに判断できたリンクばかりだったと推測します。

リンク購入に際しては、TNXというリンクネットワークを利用していたことも分かっています。

バレるのが当たり前のリンクを買っていたとも言えます。
後ほど説明しますが、こんなバレバレの有料リンクをGoogleは数カ月発見できていなかったことになります。

さらにJCPennyは、キーワードスタッフィングのリンクやDoorway pages(誘導ページ)も作っていたようです。
有料リンクだけではなかったんですね。
手動によってまでペナルティを受けたのは悪質すぎたからというのもあったのではないかと、個人的に想像します。

Googleの対応

New York Timesの通報を受けてから、GoolgeはJCPennyにペナルティを与えたように思えますがMatt Cutts(マット・カッツ)氏に言わせれば、事実は違うようです。

Googleは、去年の11月を中心に3つの件でJCPennyがガイドラインに違反していることを検出していました。
それぞれ対処したものの、依然としてJCPennyが違反を続けているかどうかを確認できていませんでした。
結果的に今回のリンク購入を見過ごしてしまっていたことになります。

「もっと早く発見できていればよかったとは思うが、十億もの検索を毎日処理しているなかで自分たちはよくやっていると思う」とMatt Cutts氏は弁解しています。

JCPennyへの対応は2段階で実行されました。

▼ 1回目:アルゴリズムによる処置

2月1日〜8日の間にアルゴリズム変更を実施ししており、これが効果を表してJCPennyのランキングは下がりました。
このアルゴリズム変更はJCPennyのリンク購入とは関係なく、もともと予定されていたものです。
JCPennyが購入したリンクの価値を下げるのに効いたということになります。

2月1日時点で平均1.3位だった53個のキーワードは、アルゴリズムが変更された後の2月8日時点では4位に落ち、2月10日時点では52位にまで下がっています。

上は昨日の記事の引用で、前半部分の順位下落がこのアルゴリズム変更によるものだと思われます(たいして落ちてない!)。

▼ 2回目:手動による処置

New York Timesの通報を受けた後に調査をして、さらに処置が必要だと判断しマニュアルでのアクションを実行しました。
これが、その後の順位下落でしょう(こっちはドーンと落ちてる)。
購入リンクを抜きにすると本来はこのくらいの位置なのでしょう。

アルゴリズム変更はJCPennyだけではなく、すべてのサイトのページに適用されるものです。
2月の上旬にランキング変動を体験したサイト管理者もいるかもしれません。

The tweak affected “how we trust links,”

「『リンクをどのように信頼するか』にこの調整は影響している」とMatt Cutts氏はアルゴリズム変更について話していますが、詳しい説明は拒んだとのことです。

「リンクの評価方法を変えた」というのは、Googleがアルゴリズム変更を実行したときに使う常套句でさほど深い意味は持たないようです。

Google社員の1人がアルゴリズム変更を予告していました。
何らかの関係があるかもしれません。

Googleのふがいなさ

ここからは事実のレポートではなくて、僕が感じたことを書きます。

昨日のエントリを見て「Googleはメジャーサイトにも厳しい、リンクを買うのは怖い」と思った人も多いと思います。
確かにそのとおりなんですが、「そのリンクって買ったリンクだろ」と明らかに分かる、あからさまな有料リンクをGoogleは少なくとも3、4ヶ月の間見抜けていなかったのです。

で、アルゴリズムで対処したと思ったら、平均の順位が1.3位から4位って。
普通に起こらないですか、これくらいの変動は?

手動で落としたことは評価しますが、Googleがポリシーにしている大規模に適用可能なアルゴリズムによる自動処理ではないですね。
同じようなことをやっている他のサイトには適用されません。

単一のキーワードだけをアンカーテキストにしても効果は頭打ちになり時としてペナルティを誘発する原因になることがあるらしいと書いたことがあります。

ただ観察していると米国のGoogleの話であって日本のGoogleでは甘いようにも思えます。
しかし、実は米国のGoogleでもターゲットキーワードだけをアンカーテキストにした自作自演または有料リンクが上位表示に大きく作用しているとしか思えない現実があります。

このような現状を目の当たりにすると、「バレバレじゃないリンクなら買っても大丈夫そう」「単一キーワードだけをアンカーテキストにした自作自演リンクでまだまだイケルじゃん」と考えてしまいます。

こうやって今でも成果を出しているサイトがたくさんありますね。
そういうサイトを見ていると、真面目にやってるのがバカバカしくなるし、自分もやりたくなります。
Googleに対して腹も立ちます。

でも僕はそれでもやっぱりリンクを買ったり、バックリンクを供給するためだけに作って誰にも読まれないようなブログを更新するのは、やめてほしいと思います。

これは倫理的な理想論では決してなくて、リスクを伴うからです。
Googleにバレていないとしても、今後もずっと隠れられ続けるという保証はどこにもありません。
JCPennyがいい例ですよね。

アフィリエイトサイトならペナルティを受けたら捨ててしまえばいいかもしれません。
でも自社の商用サイト(会社じゃなくて店舗や個人事業であっても)を危険にさらして、バレたら怖いなとビクビクしながら運用を続けていくのは僕なら選択しません。

以前にGoogleの社員としてウェブマスターセントラルの開発・運営に携わっていたVanessa Fox(ヴァネッサ・フォックス)さんが、単一アンカーテキストの人工リンクをGoogleが評価してしまっている指摘について次のように言っています。

Googleは最終的にはこういったことを捕えるでしょう。あなたや私以上にこの件についてGoogleのスパムチームはフラストレーションを感じているということを信じてほしい。必死になって彼らは取り組んでいます。すべて捕えることができるかといったら、それは無理でしょう。でもほとんどは捕えらえるだろうと私は思います。

スパムを排除できていないことをいちばん分かっているのはGoogle本人でしょう。
それでもスパム対策が日に日に強まっていることは誰もが実感しているはずです。
「検索エンジンを騙そう」という思考とは早いうちに縁を切ったほうがいいとは思いませんか?

【参照Source】