ECサイト運営者のためのショッピングカート最適化 〜 トマト栽培キット通販サイトを勝手に分析

[対象: 全員]

ECサイト運営者のためのショッピングカートの最適化について今日は解説します。

先日、インライン・バリデーションの記事を投稿しました。

この記事を書いたのは、「花くらす*野菜くらす」という野菜や花など植物の栽培キットを販売する通販サイトでトマトの栽培キットを購入したことがきっかけでした。

職業柄のせいか、ショッピングカートで購入手続きを進めていくなかでインライン・バリデーション以外にも良いところ、そして悪いところにいくつも気が付きました。

学ぶところが多いモデルなので勝手に診断させてもらうことにします。

コンバージョン率を上げるだろう要素

まずコンバージョン率アップに貢献していると判断した要素をピックアップします。
一部のキャプチャはクリックすると拡大します。
小さいと感じた画像はクリックしてみてください。

1. ありがちな疑問へのリンク

送料・ポイントについての説明へのリンク
送料や配送、独自システムのポイント制度の説明へのリンクが設置されています。

通販では送料は誰もが気になる問題です。
また「27ポイント獲得」と書かれていますがポイントが何のことか初めての購入者には分かりません。

そこですぐに疑問を解決できるように説明へのリンクが貼られています。
クリックすると小さなウィンドウが別に現れて詳細を知ることができます。
すなわちショッピングカートから移動する必要がありません。

そこに説明がなくショッピングカートから別のページへ移動しなければならないとしたらカゴ落ちの原因になってしまいますね。

2. 即決を促す

残りわずか
「残りわずか」と書くことで、購入決定を急がせることができます。
「残りわずか」よりも「残り3個」のように具体的な数字のほうがより効果的かもしれませんね。

ただし在庫が十分にあるのに即決を迫るために「残りわずか」と常に表記しておくのは信用を落とすのでやってはいけません。

3. 購入ステップの提示

購入ステップ

購入完了までにどんなステップがあるのかを示します。
この先どんな手続きがあるのか全体像を知ることでユーザーは心の準備ができます。
ECサイトでは必須ですね。

4. 購入単価アップ

あと2300円で送料無料
これはコンバージョン率を上げるというより購入単価を上げるために効果がありそうです。
追加で何かを買えば送料が無料になると知ったらもう1品カートに入れてしまうユーザーも多いことでしょう。

「送料無料」が通販では当たり前のようになっています。
しかしあえて無条件で送料を無料にせずに一定金額以上で無料にすることによって、1購入あたりの購入単価を上げることができるのではないでしょうか。

むろん、このサイトがどう考えているかどうかは僕には分かりませんが、そんなふうに想像しました。

5. ボタンの色

1つ前のキャプチャの「お買い物を続ける」と「ご注文手続きへ」のボタンを見比べてみてください。
次のステップへ進むボタンと前に戻るボタンの色を変えています。

色そのものは問題ではなく、重要な要素には他のパーツとのコントラストを効かせることが重要です。

アイトラッキングのシミュレーションツールで調べる限りでは、次のステップである「ご注文手続きへ」のほう(水色の矢印の先)に早く視線が移動しかつ長い時間見られているようです。

アイトラッキングで次へ進むボタンに視線が集まる

6. 会員登録不要の購入オプション

ゲスト購入

購入するにはサイトへのユーザー登録が必要なECサイトが多くあります。
ところが今回だけしか買うつもりがないと考えるユーザーもたくさんいます。
無理に登録を迫ることは離脱を確実に促進させます。

その回限りの購入者のための選択肢を与えることは絶対に必要です。

ただ僕が気になったのはボタンに付けられた「ゲスト購入する」というラベリングです。
僕には意味がすぐに分かる何でもない用語です。
しかしこのサイトの主要な属性ユーザーが「ゲスト購入」という言葉を即座に理解できるかどうかが気になりました。

ひょっとするとそのまま「登録せずに購入する」というラベリングでも構わないように思います。
これはユーザーテストで確かめたいところですね。

7. インライン・バリデーション

インライン・バリデーション

この前紹介したインライン・バリデーションです。
入力ミスがあったときはその場で指摘してくれます。

このサイトでは、さらにミスを未然に防ぐために各入力ボックスにカーソルを移動した時点で入力に関する注意メッセージが吹き出しで表示されます。

インライン・バリデーション

8. 郵便番号による住所サジェスト

郵便番号サジェスト

郵便番号を入力すると、それに対応した住所の候補一覧が表示されます。
完全に入力しなくても途中の段階で、そこまでで合致した住所の候補が出てきます。

郵便番号を入れ終わったあとに「住所検索」で住所を入力するシステムはおなじみですが、このサイトでは入力途中で住所が出てくるところがとても親切です。

コンバージョン率を下げているかもしれない要素

ここからはコンバージョン率を下げている可能性がある要素です。

実際に下げているかどうかはデータを見ているわけではないので断言できません。
ただ僕なら少なくとも改善の検討項目として含めるものです。

1. 複数の購入ボタン

2つの「カートに入れる」ボタン

「カートに入れてレジへ進む」ともう1つ小さな「カートに入れる」という2つのボタンがあります。

何が違うのか、どちらをクリックするのか迷わせます。
事実、僕は一瞬ですが迷いました。

大きいほうの「カートに入れてレジへ進む」は決済へ進むボタンで、「カートに入れる」はカートに入れるだけでそのままショッピングを続けるボタンになります。

“考えて”分かりました。

ショッピングカートに限らず、ウェブサイトではユーザーに“考え”させてはいけません。
Don’t Make Me Think』は有名な書籍ですね。

カートに入れた後に、「購入手続きに進む」と「ショッピングを続ける」の選択肢をユーザー与えたほうがいいのではないでしょうか。

2. 離れている金額表示と購入ボタン

金額と離れた「カートに入れる」

ECサイトでは金額表示と購入ボタンを近接させるべきです。
理由は視線のむだな動きを抑えるためです。
購入を決定する際には必ず金額をチェックしますよね。

人間の目が色と形をくっきりと認識できるのは、おおよそ水色で囲った楕円形の範囲くらいです。
それ以外のエリアはぼんやりとほぼ白黒で見えています。

人間の目の見え方

金額表示と購入ボタンを近づけることでコンバージョン率が向上することがあるので移動を検討したい部分です。

3. 個人情報保護法への同意

個人情報保護法への同意

購入手続きに進むと真っ先に迫られるのが「個人情報保護法」への同意です。

僕にはまったく予期せぬ展開で強要を迫られているような戸惑いを感じました。

個人情報保護法への取り組みを了承してもらうことは確かに必要です。
でも、いちばん初めにこのようにして長い文章を見せて同意させることが果たしてどうなのか。

万が一のことを考えてトラブルが発生しないように未然に防いでいるのだろうとも理解します。
企業姿勢としてはこうあるべきなのかもしれません。

でも購入のしやすさという観点で考えると、コンバージョンを落としていると推測します。

楽天市場は下のようにやっています。

楽天市場の個人情報保護法への同意

購入ステップの最後で提示して「同意したうえで購入する」とやっても問題にはならないのではないでしょうかね。

4. 全角・半角の強制

全角を強制

インライン・バリデーションで入力ミスを指摘してくれるのはありがたいことです。

しかし全角や半角の切り替えや統一はユーザーに迫るのではなくシステム側で対処すべきです。

僕は英数字を半角で入力します(数字は我慢できるとして全角のアルファベットはものすごく気持ち悪い!)。
住所の番地を半角で入れると怒られるのは不愉快でした。

もっというと、このサイトのインライン・バリデーションは各ボックスごとに入力上の注意点が吹き出しで表示されます。
僕には親切に思えたのですが、いちいち吹き出しが出現するので人によっては視線がそちらに行ってしまい注意力がそがれるかもしれません。

吹き出しの出現による事前の注意喚起が必要かどうかもユーザーテストしたいところですね。

5. ショッピングカート内のグローバルナビゲーション

ショッピングカートでのグローバルナビゲーション

ショッピングカートのページ上部にグローバルナビゲーションのメニューとパンくずリストが残っています。

これは不要です。

購入プロセスを進めているときに、多くはないにしてもクリックするユーザーが必ず存在するはずです。
アクセス解析ツールでクリック計測してみると判明するでしょう。

クリックするということはショッピングカートから離れること、つまりカゴ落ちに繋がります。

サイドバーは取り除いてありますが、グローバルナビゲーションも撤去したほうがいいでしょう。

6. 重複コンテンツ

最後はおまけで「ショッピングカート最適化」ではなく「検索エンジン最適化」の問題です。

重複コンテンツが発生しています。

重複コンテンツ

重複コンテンツ

クリック計測のためなのか、パラメータが付与されているナビゲーションメニューのリンクがところどころあります。
これが重複コンテンツを発生させています。

上のキャプチャと下のキャプチャは同一のページですが、素のURLとパラメータの付いたURLの2つでインデックスされています。

確認できた重複コンテンツの数自体は数ページだったしGoogleが自ら正規化してくれているページもあったのでこのままにしておいても大きな問題になることはなさそうです。

でも重複コンテンツは百害あって一利なし。
rel=”canonical”タグを1行記述しておくだけで無用な発生を防げますね。

以上、植物栽培キット通販サイトのショッピングカートを僕独自に分析してみました。

お断りしておきますが、このサイトと僕には何の繋がりもありません。
完全に外から見た状態で診断しました。

僕がダメ出しした要素でも、実は検証に基づいて取り入れている要素があるかもしれません。

もし万が一関係者の方がこの記事を読んでいたら感想がほしいですね。w

第三者の視点でいろいろ好き勝手に書きましたが、通販サイトとしてはよくできているというのが僕の印象です。

僕自身がコンバージョンしたことがなによりも物語っています。

購入したトマトの苗木はうちのベランダで日差しを浴びていて、トマト好きの僕は夏の収穫を楽しみに待っています。:)

トマトの苗