Googleモバイルファーストインデックス後はレスポンシブが唯一の選択肢か? #inhouseseo

[レベル: 中級]

レスポンシブ ウェブ デザインが選択すべき構成だ
(Responsive Web Design is the way to go.)

Google の Gary Illyes(ゲイリー・イリェーシュ)氏は、8月22日に開催された ISM Spin-off #2 で、このようにレスポンシブ ウェブ デザインをかつてないほどに推奨しました。

これまでは、「動的な配信」と「別々の URL」を含めた3つのモバイル構成のどれを選択しても構わないと言っていました。
しかし方針を変えて、レスポンシブ ウェブ デザイン1本に絞ったのです。

鯨理

動的な配信と別々のURLが抱える問題

レスポンシブ ウェブ デザイン(以下、RWD)をゲイリーが強く推奨する最大の理由は、モバイル向けサイトと PC 向けサイトに差異がないことです。
見た目は違っていたとしても、同じ HTML を配信しているので、コンテンツはもちろんのことコードレベルでも同一です。

これに対し、「動的な配信」と「別々の URL」の構成では、モバイルと PC に対して、専用の HTML をそれぞれ配信します。
したがってモバイルと PC に向けて中身が異なるページの配信が可能です。
実際にそうしているサイトがたくさん存在します。

別々の HTML を配信するという点に、動的な配信と別々の URL の落とし穴が存在します。

すでに知っているように、モバイル ファースト インデックス(以下、MFI)ではモバイル向けページがインデックスの対象になります。
現状では、PC 向けページがインデックスの対象になっています。

このインデックスの切り替えにともない、モバイル向けページと PC 向けページの“差異”がランキングの問題を引き起こします。
一言でいえば、PC 向けページにあるものがモバイル向けページにない状態が大問題になるのです。

ゲイリーによれば、MFI をテストするなかで、動的な配信と別々の URL 構成において特に次の3つの大きな問題が明らかになったとのことです。

1. コンテンツの欠如

PC 向けページにあるコンテンツがモバイル向けページにない状態です。
理由はさておき、モバイル向けページではコンテンツを省略しているサイトが存在します。

MFI はモバイル向けページをインデックス対象にします。
PC 向けページにあったとしてもモバイル向けページにないコンテンツは評価されなくなります。

そのため、同じクエリであっても順位が下がることがあります。
最悪の場合は、そのクエリで検索結果に出てこなくなるかもしれません。

対して、同一の HTML を配信する RWD では、コンテンツの欠如は発生しません。

2. 構造化データの欠如

モバイル向けページでは、構造化データをマークアップしていないサイトがあります。

MFI ではモバイル向けページをインデックスするので、構造化データもモバイル向けページにマークアップしなければなりません。
たとえば構造化データが PC 向けページにあったとしても、モバイル向けページになければリッチスニペットは確実に消滅するでしょう。

3. メタデータの欠如

そのほかのメタデータについても、同じことが言えます。

代表例は、多言語・多地域サイトで用いる hreflang です。
MFI では hreflang もモバイル向けへのマークアップが必要になります。

ここで挙げた3つ以外にも、モバイル向けページでの画像や動画の省略もよく見られるパターンとのことです。
PC 向けページに掲載していた画像がもしモバイル向けページになければ、画像検索からのトラフィックを失うことになります。
Google からしてみれば、画像検索に掲載される画像の数が著しく減少し、検索結果の品質がガクンと落ちます。

このように、PC 向けページとモバイル向けページの差異が原因で、MFI に切り替えるとランキングを大きく損ねるページが出現することがさまざまなテストから浮き彫りになったのです。

RWD は MFI-Ready

MFI導入に際して、現在の検索結果(ランキング)を保つことを Google は命題にしています(“クオリティ ニュートラル”)。
しかし、動的な配信と別々の URL 構成では差異が妨げになり、ランキングを維持できないサイトが多いのです。

MFI が導入されたあとでも今までどおりのランキングを維持するためには、モバイル向けページを PC 向けページの“簡略化バージョン”にしてはいけません。
PC 向けページと、文字どおり対等に構成する必要があります。

対象的に、RWD ではこうした問題はほとんど発生しません。
RWD は、本質的に“MFI-Ready” (MFIに備えがある)なのです。

RWD は将来的にも耐性あり

RWD 以外の構成、つまり動的な配信と別々の URL は問題が起きやすく、そのトラブルシューティングはかなり面倒になると予想されます。
実際に、MFI 対応のために大変な思いをしているサイト管理者も多いことでしょう。

MFI 導入後に仮に検索トラフィックが落ちたとして、何が原因なのかの調査とその対応はさぞかし困難なはずです。
万が一の事態が発生した場合、それに耐えられる覚悟があるでしょうか?

5年ほど前に、Google はモバイル対応(モバイルフレンドリー対応)を推奨しました。
自分たちの立場を利用して、Google は横暴すぎやしないかと憤慨した人もいたはずです。

しかしスマートフォンがこれだけ普及した今、モバイル対応していないサイトはユーザーには本当に使いづらくなっています。
モバイル対応が確かに必須なウェブの世界になりました。

⻑期的には Google が半ば強制したモバイルフレンドリーは正しいことだったと今ならわかります。

同じように、将来的な視点に立ち、唯一の選択肢であるかのように Google は RWD をより強く推奨することにしたのです。

RWD 以外はペナルティではないけれど、RWD を前提に

RWD にしなかったからといって、ペナルティを受けるようなことはもちろん絶対にありません。
技術的には、動的な配信も別々のURLも Google はサポートを続けます。

RWD へ転換したくても現実的に無理というサイトもたくさんあります。
今の構成を維持してまったく構いません。

ただし動的な配信または別々の URL 構成を続けるのであれば、モバイル向けページが PC 向けページに 100% 対応していることを確実にすることが必須です。
さもないと、MFI で許容できない損害を被るでしょう。
(鈴木注: 何から何まで同一にしろという意味ではなくて、PC 向けページで提供しているものはモバイル向けページでも提供しようということです。)

一方で、新規にオープンするサイトに関しては、RWD を前提に設計したいものです。
そうすれば、将来的にも安心して運用できそうです。