米国地方裁判所、Googleに対し検索データを競合他社と共有するように命じる

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米 Google がインターネット検索市場で反トラスト法(独占禁止法)に違反していると認定された裁判で、米連邦地裁は是正に必要な措置を発表しました。

具体的には、シャーマン法第 2 条違反に対する救済措置の一環として、Google に競合他社との特定のデータ共有を命じました。
判決は、「Google の排他的行為の果実を否定し、競争を促進する」ことを目的としています。

一方でデータ共有の代わりに、Chrome や Android などのプロダクトの分割は回避されます。

Google が他社と共有するデータ(としなくていいデータ)

裁判所は、次の 2 つの主要なデータカテゴリの共有を、修正を加えた上で承認しました。

検索インデックスデータ

Googleは、適格な競合他社に対し、限界費用で、絞り込まれた範囲の検索インデックスデータを 1 回限りのスナップショットとして提供することが義務付けられます。

目的は、特に希少なロングテール検索に回答する能力を向上させることで、競合他社が競争力のある検索インデックスをより迅速に構築するための起爆剤を与えることにあります。

検索インデックスの共有対象データは次のとおりです。

  • ウェブ検索インデックス内の各ドキュメントの一意の識別子(DocID)
  • 各 DocID をウェブ上のURLに対応させるマップ
  • URL が最初に確認された日時と、最後にクロールされた日時
  • 各ドキュメントのスパムスコア
  • デバイスタイプフラグ(例:モバイルフレンドリー)

一方で、次のデータは共有対象から除外されます。

  • 第三者のパートナーシップやデータフィードから収集されたデータ
  • 「人気度」(Navboost など)や「品質」(権威性など)に関する Google 独自の高度なランキングシグナル

これらデータの共有は行き過ぎであり、単なる生のユーザーデータではなく、主に Google のエンジニアリングとイノベーションの産物であると裁判所が判断したのが除外の理由です。

ユーザーインタラクションデータ

裁判所はまた、Google が拡大性における優位性の根幹である特定の click-and-query(クリック・アンド・クエリ)データを共有することも命じました。

このデータは、情報の鮮度を確保するため、判決期間中に少なくとも 2 回共有されるものの、上限は技術委員会との協議の上で決定されます。

ユーザーインタラクションの共有対象データは次のとおりです。

  • Glue データ: Navboost データを含む「スーパークエリログ」である GLUE 統計モデルの構築に使用される、生のユーザーインタラクションデータ。検索結果ページ上でのクエリ、クリック、ホバー、その他のユーザーインタラクションに関する情報が含まれる。
  • RankEmbed データ: RankEmbed モデルのトレーニングに使用されるユーザー側データ(ただし、人間の評価者によるスコアは除く。これらのモデルは、Googleがロングテール検索への回答能力を向上させる上で極めて重要である。
※すずき補足:Glue は「super query log(スーパー検索ログ)」と呼ばれるもので、ユーザーの検索や検索結果とのインタラクションに関する幅広い生データを収集する。それ自体がモデルではなく、基盤となるデータセット。RankEmbed は、Google が検索クエリを理解しウェブページをランキングするために用いる、AI ベースのディープラーニング型ランキングモデル。Glue とは異なり、単なるデータのログではなく、高度に洗練されたシステム。

AI Overviewなどの生成 AI モデルのトレーニングに使用されるユーザーデータは共有対象からは除外されます。
Google の検索におけるスケールの優位性が、活発な市場で競争している生成 AI 製品の品質優位性に繋がっているという証拠が乏しいと裁判所は判断しました。

広告データは棄却

裁判所は、原告側が求めていた Google の広告データの共有は棄却しました。
理由として挙げたのは次の 2 つです。

  • 要求が過度に広範であり(機密性の高い広告主のコンバージョンデータを含む)、検索テキスト広告市場での競争をどのように促進するかの証明が不十分である
  • 広告市場の競争は主に検索エンジン間の競争によって左右され、それは他の救済措置によって既に対応されている

判決を受けての Google の声明

裁判所の判決を受けて、Google は次のように声明を出しています。

本日、検索の配信方法をめぐる司法省の訴訟を担当する米国の裁判所が、今後の対応に関する決定を下しました。

本日の判決は、AI の登場によって業界が大きく変化し、人々が情報を見つける方法が格段に多様化していることを認めています。これは、2020 年にこの訴訟が提起されて以来、当社が繰り返し主張してきた「競争は激しく、人々は自分が望むサービスを容易に選べる」という点を裏付けるものです。だからこそ、2024 年 8 月に下された裁判所の責任に関する初期判断に、当社は強く異議を唱えてきました。

今回、裁判所は Google サービスの配信方法に制限を課し、競合他社と検索データを共有するよう当社に求めました。これらの要件がユーザーやプライバシーにどのような影響を及ぼすかについて当社は懸念しており、現在慎重に判決内容を精査しています。同時に、裁判所は Chrome や Android の分離を命じることは、検索配信に焦点を当てた本件の範囲を超え、消費者やパートナーに害を及ぼすとの認識を示しました。

これからも私たちは、人々に選ばれ、愛される革新的な製品を作るという最も重要な使命に注力し続けます。

※すずき注:原文は英語。翻訳は ChatGPT による

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判決に Chrome 事業の売却は含まれておらず、事業の分割はひとまず回避されました。
しかし、検索データとユーザーデータの他社との共有が命じられました。

Google が素直に従うはずもなく、今後の動向が注目されます。