ブランド認知度がLLMの言及に与える影響

[レベル: 上級]

ブランド認知度と、大規模言語モデル (LLM) がその応答でブランドに言及する頻度との関連性をSeer Interactive が調査しました。

調査結果によると、確立・認知されたブランドであることは、特に信頼性が重要な要素となる分野において、AI が生成する回答内での可視性に大きな影響を与える可能性が示唆されています。

ブランド認知度と AI による言及の相関関係

ブランド認知と AI の言及を調査するため、1 万件の質問を収録した「AI Answers」データセットを利用し、次の 2 つの変数の相関を分析しました。

  • ブランド MSV(Monthly Search Volume):ブランド名に対する月間平均検索回数
  • AI 言及数:チャットボット回答内でブランド名が出現した総回数
※LLM には OpenAI の GPT4o API を使用

分析の結果、ブランド MSV と AI による言及の間には顕著な相関関係(0.18)が見られました。
この相関関係は、オーガニックランキングのキーワードを除外した場合、ドメインランク(0.25)に次いで高いものとみなされます。
※「ドメインランク (Domain Rank) は独自指標

The Correlation Between Brand Awareness & AI Mentions

調査結果の記事を書いた Nick Haigler 氏は、この相関関係の高さは論理的だと考えています。
次の理由によります。

  • ブランドの卓越性は、LLMが使用する他のシグナルにプラスの影響を与える可能性がある。たとえば、信頼できるサイト上で強力なオンラインプレゼンスを持つブランドは、LLM によってクロールされ、引用される可能性が高くなる
  • 認知度の高いブランドは、より高いドメインランクやより多くのバックリンクといった、権威性を示すシグナルを獲得する傾向があり、信頼できるニュースや業界報道で言及される可能性も高くなる

特定の業種でブランド認知度はより重要に

LLM の可視性に対するブランド認知度の影響は、特定の業界でより顕著に現れるようです。

分析によると、より強い相関関係が次の業種で示されました。

  • 銀行・金融
  • CRM・マーケティングオートメーション
  • テクノロジー・ソフトウェア
  • コラボレーション・コミュニケーションツール
  • フィンテック・金融ソフトウェア
Brand awareness hits harder in some verticals more than others

これらの業種は、特に、信頼性と信用性が高く評価される分野です。
たとえば、当座預金口座の開設について尋ねられた場合、LLM は現状では、小規模な地方銀行よりも大手都市銀行を提案する可能性が高くなっています。

一方で、他の業種では、ブランド認知度は依然として必要であるものの、独自の価値提案やユーザーエクスペリエンス、コンテンツの質といった他の要素のなかで、より重要視される可能性のある要素の 1 つに過ぎないとも分析しています。

LLM での言及を増やすために取り組むべき施策

信頼でき、認知度の高い情報源から情報を LLM が取得しているとすれば、自社ブランドが会話の中に確実に含まれるようにするために、調査では次の取り組みを提案しています。

人間とボット双方に向けたブランドキャンペーンへの投資

  • ブランドの MSV(月間検索ボリューム)だけが AI による言及を促進する唯一の要因ではないが、一貫したシグナルであり続ける
  • 評価の高いパブリッシャー、特に AI チャットボットと提携しているパブリッシャーからのアーンドメディア掲載
  • 業界の専門家、ジャーナリストネットワーク、PR の機会を活用することで、標準的な SEO だけで得られる以上の認知度を獲得できる

トレンドに基づいたコンテンツの作成

  • 調査では、AI チャットボットからの紹介は、情報提供型またはソートリーダーシップ(先駆的な思考)型のクエリを伴うことがよくあった
  • 会話を前進させる洞察を共有する。単にランキングされるだけでなく、変化を理解する手助けをすることで知られるようになる
  • 最新の業界調査でブランドが知られていれば、LLM が検索機能を活用する際にそのブランドを参照する可能性が高まる

テクニカル SEO をおろそかにしない

  • ブランド認知度が非常に高かったとしても、AI ボットをブロックしていたり、適切なサイト構造を持っていなかったりすると、LLM はブランドを参照する際にサードパーティの情報を使用してしまう
  • 十分に最適化されたサイトは依然として不可欠。コンテンツがクロール可能でなければ、LLM はそれを回答に含めることができない

ここで提案されている取り組みは、LLM での言及促進に限ったものではないし、特別新しい考え方ということでもありませんね。
認知度向上のための地道で継続的な取り組みが AI 検索の最適化にも結局は役立つということです。