[レベル: 中級]
The Wall Street Journal の Bold Names ポッドキャストに Google の検索担当バイスプレジデント兼責任者である Liz Reid(リズ・リード)氏が出演しました。
リード氏は、生成 AI の台頭のなかで Google がいかに検索を再発明しているかを語ります。
また、AI を責任ある形で統合しつつ、広告収益を維持し、パブリッシャーを支援し、ユーザーの信頼を保つという同社の戦略を、業界全体の変化や倫理的課題への対応と併せて説明しました。
主要ポイント
リード氏がポッドキャストで語った主要ポイントをまとめます。
Google 史上、最も深い転換
- AI は Google 検索がこれまで直面したなかで「最も深い転換」であり、情報へのアクセスと理解の方法を根本から変えるため、モバイルへの移行をも上回る。
- この新技術によって、多言語検索や複雑な質問応答といった長年の構想が実現可能になった。
旧来からの AI 統合
- ChatGPT 以前から、BERT やトランスフォーマーなどの AI を Google は検索に統合してきた。
- かつての AI は主にランキングや関連性判断など「裏方」で使われていたが、近年は性能が向上し、ユーザーの目に触れる形での活用が可能になった。
検索の未来:人間 + AI のハイブリッド
- ユーザーは AI による要約と人間の本物の視点の「両方」を求めている
- Google の目標は、AI で発見を速くしつつ、信頼できる人間のコンテンツへと橋渡しすることにある。
AI Overview と広告収益
- 結果上部の要約である AI Overview は、全体として広告収益を損なっていない。
- 一部の広告クリックは減少したものの、検索回数の増加が影響を相殺している。
- 会話的で簡単な検索体験が質問数を押し上げ、検索ボリュームと機会を拡大している。
競争、独禁法、そして「パイを広げる」
- ChatGPT や Perplexity など AI ツールの台頭にもかかわらず、今を「拡張の瞬間」と捉えている。
- ゼロサムではなく、AI がオンラインで投げかけられる質問総量を増やし、複数のプラットフォームが同時に成長しうる。
- Google は、検索の進化と同時に Gemini も開発する二正面の戦略で「自らを内側からディスラプト」している。
ユーザー行動とコンテンツ形式の変化
- とりわけ若年層では、長文記事よりもショート動画、フォーラム、ユーザー生成コンテンツを好む傾向が強まっている。
- Google は、ユーザーの需要を反映してこれらの形式をより多く表出させるよう、ランキングアルゴリズムを適応させている。
パブリッシャーとクリエイターの支援
- オリジナルで高品質なコンテンツを促進し、ウェブの「健全性」を維持することを Google は目指している。
- AI Overview 内のインライン出典リンク(「出典:[ソース名]」のような表示)などの工夫により、クリエイターの可視性、ブランド認知、トラフィックを高める。
- Top Stories や Discover の新しいパーソナライズ機能では、ユーザーが信頼する情報源や購読先を優先表示できる。
「AI スロップ」と低品質コンテンツへの対抗
- 人間のコンテンツがAI生成物に埋没するという「Dead Internet Theory(死んだインターネット理論)」がある。
- Google はスパム検出の知見を生かし、「低価値」または反復的なAI生成コンテンツを順位下落させる一方、創造的なAI支援作品は正当なものとして評価する取り組みを進めている。
※すずき補足:「AI スロップ (AI Slop)」とは、生成 AI で大量生産された、重複・薄味・誤情報まじりの低品質コンテンツを指す俗称。検索順位や広告収益を狙うコンテンツファームやボット投稿、でっち上げの要約・レビュー・出典などが典型で、人間が作った質の高い情報を埋もれさせ、検索結果やソーシャルメディア上の情報環境を汚染する点が問題視されている。
人間の学習体験
- AI は「下調べ」の負担を減らしつつ、好奇心を損なわない。
- かつてインターネットが図書館に代わる利便性を提供したように、AIは学習の入り口を素早く開く助けとなり、学びそのものを置き換えるわけではない。
- 彼女はAIを、複雑で時間のかかる課題に取り組むのを助ける「家庭教師」にたとえられる。
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リード氏のインタビューは昨日の記事でも取り上げました。
※すずき補足;Elizabeth Reid と Liz Reid は同一人物。Liz は Elizabeth の愛称、ニックネーム
被っている部分もありますが、どちらかでしか話していない内容もあります。
Google のビジョンを知っておくことは SEO の優先度や方向性を決定するのに役立ちます。