[レベル: 上級]
AI 検索は、コンバージョン計測の方法をどのように変えているのか?
この問いに対する見解を Microsoft Bing の公式ブログが記事にしました。
主要ポイントをまとめます。
最大の変化:クリックから対話へ
記事は、AI 検索がユーザーの検索ジャーニーを根本的に変えていることに注目しています。
ユーザーは「青いリンク」のリストをスクロールする代わりに、AI インターフェイス内での対話的な回答を通じてトピックを探索するようになっています。
- より短く、購入意欲の高いジャーニー: ユーザーはAIインターフェイス内でのフォローアップ質問を通じてニーズを具体化する。リンクをクリックする時点では、すでに高い目的意識と確信を持っており、コンバージョンまでの経路が短縮されている(平均 33% 短縮)。
- 「アップストリーム(上流)」での意思決定: 調査や意思決定の大部分は、ユーザーがウェブサイトを訪問する前に、AI が生成した要約や比較表の中で直接行われるようになっている。
成功を測る新たな指標
エンゲージメントが検索結果ページそのもの(ゼロクリック・インタラクション)に移行しているため、「クリック数」のような従来の指標だけでは、もはや成功の唯一の指標とはなりえないと記事は主張します。
- 可視性 (Visibility) が通貨になる: AI の回答におけるインプレッション、引用、配置を追跡することが重要。AI による要約の中で引用されることは、ジャーニーの初期段階でブランド選好を形成する。
- 量より質: AI 検索がもたらすトラフィックの総量は従来の検索より少ない可能性があるが、そのトラフィックの価値ははるかに高い。次のようなデータがでている。
- Microsoft Clarity のデータによると、AI経 由の流入は従来のチャネルと比較して最大 3 倍のコンバージョン率を示している。
- AI を活用した体験における購入意欲の高い(ハイ インテントな)コンバージョン率は、76% 高くなっている。
マーケターとパブリッシャーのための戦略
こうした変化に適応するため、コンテンツ所有者は機械可読性 (Machine Readability) とインテント(意図)に合わせて最適化すべきだと記事は提案します。
- 構造化が重要: スキーママークアップ(構造化データ)、FAQ、明確な比較表を使用することで、LLM が回答内でコンテンツを解釈し、引用しやすくなる。
- 新たなシグナル: マーケターは、AI の要約に自社コンテンツがどの程度表示されるかといった「アップストリーム」のシグナルに注目し、その可視性を下流のアクション(購入、登録)と結びつける必要がある。
- パブリッシャーの焦点: ニュースサイトの場合、目標は即時のクリック獲得から、AI の回答で確立された権威性によって促進される深いエンゲージメント(読了率、再訪問)へと移行する。
AI 検索の時代における成功には、「クリックを追いかける」ことから、可視性と影響力のために最適化することへの移行が鍵になりそうです。
ブランドは、AI がユーザーの質問に答える際に、自社のコンテンツが「自然な選択」となるよう、権威性を持ち、適切に構造化されていることを確実にする必要があります。
ここでは、主要点だけをまとめました。
元記事には、もっと多くの情報が掲載されているので全文も読むといいでしょう。
Google ゲイリーの反応
この記事を書いた Bing 検索のプリンシパル プロダクトマネージャである Fabrice Canal(ファブリス・キャネル)に、Google 検索の Gary Illyes(ゲイリー・イリース)が LinkedIn で次のようにコメントしています。
Lycos や Altavista を使っていた世代として、今の検索環境は正直つかみどころがないと感じている。理屈では理解している──検索は、自分とはまったく異なる行動様式とニーズを持つ新しいユーザー世代に合わせて進化している。でも、それでもこの変化を受け入れるのは簡単ではない。(https://lnkd.in/e7c4qTBc)
ただ 1 つ確信しているのは、SEM と SEO はこれまで 30 年間そうしてきたように、検索とともに共進化していく必要があるということだ(SEO は死んでいないからね https://lnkd.in/edgv72xY)。青いリンクの一覧をスクロールする代わりに、人々は今や “会話” を通じて探索し、追加の質問を投げかけ、ウェブサイトに到達するはるか前に確信を深めていきます。この新しいコンバージョンへの道筋は、ブランドやコンテンツ所有者に、“クリックを追いかける” ことをやめ、成果を真に左右するシグナルにこそ集中すべきだと示しています。
Google 検索のまさしく中枢にいるゲイリーでさえ、AI の発展が拍車をかけている劇的な変化は、頭では理解していても受け入れがたいのだそうです。
それでも、変化への対応は避けられません。
