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ChatGPT のリリースから2025 年 7 月までの 150 万件の会話にもとづいた利用状況を、OpenAI の経済研究チームとハーバード大学の経済学者デビッド・デミング氏が分析し、全米経済研究所(NBER)のワーキングペーパーとして発表しました。
この記事では、数値データを含む主要ポイントを解説します。
成長と普及
- ChatGPT は 2022 年 11 月に公開され、2025 年 7 月には週あたり 7 億人のアクティブユーザーに到達した。これは世界の成人人口のおよそ 10% に相当する。
- 2025 年 7 月時点で、ユーザーは週あたり 180 億件のメッセージを送信していた。
- 総メッセージ数は 2024 年 7 月から 2025 年 7 月の間に 5 倍に増加。
- 初期の利用者は男性が多かったが、性別差は大幅に縮小。2025 年 6 月には女性的な名前を持つユーザー(52.4%)が男性的な名前のユーザー(44.7%)をやや上回った。
- 全メッセージの 46% は 18〜25 歳のユーザーによるもの。
- 過去 1 年間、中低所得国での利用拡大が特に顕著。
仕事関連と非仕事関連の利用
- 非仕事関連メッセージは 2024 年 6 月の 53% から 2025 年 6 月の 73% へと増加。
- この増加は新規ユーザーだけでなく、既存ユーザーの利用習慣の変化によってもたらされた。
- 高学歴かつ専門職のユーザーは ChatGPT を仕事で利用する可能性が高い。
- 仕事利用は年齢とともに増加し、36〜45 歳で 31.4% とピークを迎えるが、66 歳以上では 16.1% に低下。
会話トピックとユーザー意図
- 会話の約8割は「実用的な指導」「情報検索」「ライティング」に分類される。
- ライティングは仕事関連メッセージの 40% を占め、その大部分は(編集、要約、翻訳などの)テキスト修正である。
- その他の利用:プログラミング(4.2%)、チュータリング/教育(10.2%)、人間関係(1.9%)、ゲーム・ロールプレイ(0.4%)。
- ユーザー意図の内訳:49% が「質問(Asking)」、40% が「作業依頼(Doing)」、11% が「表現(Expressing)」。
- 仕事関連では 56% が Doing、35% が Asking。
- 特筆すべきは、過去1年間で「質問(Asking)」の伸びが「作業依頼(Doing)」を上回った点。
仕事上の活動と品質
- O*NETフレームワークによると、仕事関連メッセージの 81% は次の 2 つに該当する:
- 情報の取得、記録、解釈
- 意思決定、問題解決、助言、創造的思考
- 意思決定と問題解決は、ほぼすべての職業群で上位 2 つの活動に含まれる。
- ユーザー満足度:2025 年 7 月までに「良い」インタラクションは「悪い」の 4 倍以上に増加。
- 「質問(Asking)」メッセージは最も高品質と評価され、「作業依頼(Doing)」や「表現(Expressing)」を上回る。
- トピック別では、「自己表現」が最も高評価であり、「技術的支援」や「マルチメディア」は最低評価となった。
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この研究から、ChatGPT は、特にテキスト処理や問題解決において強力なプロフェッショナルツールである一方、その主要な役割は、実用的なガイダンスや情報発見のための主流な消費者向けアシスタントへと進化してきたことが分かります。
ユーザー層は幅広くなり、最も成功しているインタラクションは情報提供に関するものです。
こうした現状は、知識へのアクセス、言い換えれば「検索」するための次世代インターフェースとしての ChatGPT の利用の増加を示しています。