CNET MoneyのAI生成コンテンツには問題ありあり: 情報開示不足、間違い、盗作疑い

[レベル: 上級]

AI に記事を書かせるならレビューと情報開示が必須だと指摘した投稿のなかで、模範例として CNET Money を紹介しました。
しかしながら、模範例というよりもむしろ反面教師として紹介したほうがよかったかもしれません。

こっそりと AI に記事を書かせていた

CNET Money は、AI に記事を書かせていたことを最初から堂々と開示していたわけではなかったようです。

2022 年 11 月から実験的に AI に記事を書かせ始めたとのことですが、当初は情報開示が十分ではありませんでした。
まず著者名を CNET Money Staff で公開していました。
“Staff” と書かれていたら、ほとんどの読者は人間のスタッフだと解釈するでしょう。

CNET Money Staff

密かに AI に記事を書かせていたことが明るみに出ると、著者を CNET Money Staff から CNET Money に変更し、専用の著者紹介ページを 2023 年 1 月 11 日に作成しました。
AI による記事公開を始めてからおよそ 2 か月が経過してからの対処です。

加えて、執筆者名の CNET Money をクリック/タップすると、AI が書いたことを示すパネルが出現するようにも修正しました。

cnet

とはいえ、どれだけの読者がクリック/タップするでしょうか?
情報開示としては不十分です。

指摘を受けたせいもあってか、現在は、著者名の下に AI が書いたことを示すメッセージが最初から出ています。

This article was assisted by an AI engine and reviewed, fact-checked and edited by our editorial staff.

This article was assisted by an AI engine and reviewed, fact-checked and edited by our editorial staff.

この記事は AI エンジンによって書かれていて、当サイトの編集スタッフによってレビューとファクトチェック、編集されています。

個人的には、フォントサイズが小さいことでまだ非難されそうな気もしますが。

とにもかくにも、CNET は、人々の注目を集めたのちに、より明確に情報開示するように修正しました。
AI が書いた記事を公開するのであれば、初めから明示することが求められるでしょう。

記事に間違いだらけ、さらに盗作疑いも

情報開示を改善したのであれば、対応が速くてよろしいで済むところですが、問題はこれにとどまりません。

CNET の AI が書いた記事にはもっと重大な問題があることを Futurism が暴きました。
重大な問題とは、間違い盗作疑いです。

CNET Money は金融系のサイトです。
たとえば、記事で紹介している福利の利子やカーローンの計算方法が間違っているそうです。
そこそこ知識がある人が読めば、すぐに気付く間違いのようです。

さらには、ほかのサイトの記事とほぼ同じ記述がそこかしこに発見できたそうです。

たとえば、次の一文で始まる記事があります。

Gift cards are an easy go-to when buying a present for someone.

Gift cards are an easy go-to when buying a present for someone.

この出だしは、Forbs ADVISOR が公開した記事の出だしと酷似しています。

Gift cards are an easy-to-please present for just about anyone.

単語が若干異なっていますが、類義語に入れ替えただけです。
盗作記事の常套手段ですね。

しかも、記事タイトルは完全に同一です。

Forbes ADVISOR の記事公開日は 2023 年 1 月 3 日です。
CNET Money の記事公開日は 2023 年 1 月 13 日です。
Forbes ADVISOR がオリジナルだと考えるのが自然です。

これは一例で、ほぼ同一の文をいくつも Futurism は発見しました。

AI が書いた記事を人間のスタッフがレビューおよびファクトチェックして、必要に応じて編集していると CNET Money は言っていますが、怪しいものです。
見習うべき例ではなく、見習ってはいけない例です。

AI 生成コンテンツで訴えられる

盗作に関しては、著作権侵害について慎重になったほうがよさそうです。

AI で画像を生成する Stable Diffusion の開発元である Stability AI を著作権侵害で Getty Images は訴えました。
Stable Diffusion と同種の AI 画像生成ツールを提供する Mid­jour­ney と DeviantArt も著作権侵害で訴えられています。

画像だけではなく、AI 生成の記事が著作権侵害で訴えられる例も今後出てくるかもしれません。

一般に利用できる多くの AI はウェブに存在するデータで学習します。
一見するとオリジナルのコンテンツのように思えても、実際のところは独自の価値を付加しない単なる寄せ集めになってしまうことも考えられます。

AI によるコンテンツ作成には将来性があります。
それでも現状では、特に信頼性、独自性という観点から無条件に頼ることは危険だという認識のもとに利用したいものです。